Chrono 日本語ブログ、はじめます

Founder and CEO
気づけば、Chrono を創業してから一年あまりが経ちました。会社のこと、考え、学び、プロダクト開発への取り組みなどを、より多くの方々に知っていただけるように、このたび、日本語のブログを開設しました。コンテンツは翻訳記事ではなく、日本の方々にとって価値のある独自のもので、プロダクト開発の進捗から技術解説、海外市場の情報まで幅広くお届けしてまいります。
ところで、Chrono ですが、米国サンフランシスコを拠点に、Unix 哲学に基づいた小さく、モジュラーで、相互運用性の高いソフトウェア開発と海外市場インテリジェンスをサポートする独立系テック企業です。私自身、日米の大手テック企業からスタートアップで成功と失敗を重ねる中で、自分が立っているバンテージポイントと経験を活かして何かおもしろいことができるのではないかと思い、独立しました。37signals 社などが提唱する独立・自立したテクノロジービジネス哲学に共感し、投資家を迎えるよりも、我々の顧客にとって正しいことを優先する姿勢で取り組んでいます。
現在開発中のプロダクトは Change Platform と呼んでいるもので、個人や小規模チームのクリエイター、ソフトウェア開発者を対象としています。このプロジェクトは学びが多く、開発を進める中でいくつもの気づきがありました。 たとえば、高性能なデバイスの普及に加え、現代の Web プラットフォームも飛躍的に進化しました。かつて IE8 対応に頭を悩ませていたころとは比べものにならない実装の自由が実現しました。それにも関わらず、多くの SaaS 開発者が、Viaweb など、初期の Web アプリケーションから本質的に変わらない Client-Server アーキテクチャを採用し続けています。もちろん、Client-Server アーキテクチャが必要な問題領域は多数ありますし、ビジネスの話になると採用する理由は山ほどあります。しかし、現代において、それが当然の設計であり続ける必要は本当にあるのでしょうか。この現状に疑問を抱き、ブラウザのポテンシャルを活用したローカルファーストな設計に方向転換しました。まだ試行錯誤の段階ですが、和気あいあいと開発しています。
最後に AI について少しだけ。昨今、多くの企業が AI を中心としたプロダクトを開発していますが、弊社はその流れとは少し異なるアプローチを取っています。AI や LLM は確かに強力なツールであり、適切な場面では積極的に活用します。たとえば、我々の Change Platform で LLM の出力を整理したり、Model Context Protocol (MCP) を通じた LLM との統合なども検討しています。しかし、AI はあくまで手段であり、目的ではありません。この考え方は、現在のトレンドに逆行するかもしれませんが、プライバシー保護と人間の主体性を尊重することを重視した結果です。人間社会にとって本質的に望ましい方向とは何かを考えたとき、人々は課題を AI に丸投げするのではなく、人間の創造力と、AI も含むソフトウェアが適切に協調する環境こそが、自分の理想に近いかたちだと考えています。
このブログを通じて、Chrono での取り組みや学び、そして日本企業の皆さまにとって有益な海外市場の情報などを、少しずつお伝えできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。